Almini

 WFGは常にパイオニアとして日本人が知らないようなものを紹介し続けてきました。現在のネット社会においてそれはとても難しいことですが、2017S/SにデビューしたAlminiはドレスシューズのブランドとしては、日本はおろか世界でもほとんど知られていません。それもそのはず、ワールドフットウェアギャラリーGINZA SIXが、2016年1月15日にミラノにオープンした旗本店に続きAlminiのドレスシューズが手に入る世界で2番目の売場なのです。 

 Alminiは1921年創業。これまで子供靴やサッカーシューズを作ってきた歴史をもっており、80年代から現在まではUAEでヒットしているラグジュアリーサンダルを作ってきました。Alminiがそれまで経験のないドレスシューズのプロジェクトをはじめたのは、つい最近のことです。目指したのは究極のエレガントさと履き心地の良さの実現です。しかし、それまでサンダルを作ってきたAlminiにはノウハウも設備もありませんでした。この何も持たないという状況を逆手に取り、彼らは「誰にもできないことができる」と考えたのです。彼らは自分たちで機械の開発から取り掛かり、試行錯誤を繰り返しました。

 エレガントなドレスシューズと考えるときまず思いつくのは、マッケイ製法を採用することによってソールを薄くすることです。しかし、Alminiにはマッケイ製法のノウハウがなく、さらに履き心地の良さも同時に目指していたため、その発想には至りませんでした。辿りついたのは、彼らが「Alminiメソッド」と呼ぶ製法。成形したアッパーの裏側を表にした状態でソールの断面と縫いつけ、ひっくり返すというものです。ソールの断面を縫う技術は、熟練の職人達がサンダル作りで行っていたためにこれが活かされました。これにより、外からは縫い目が見えない構造になり、さらに足にあたる内側の部分にも縫い目が位置しないという形になります。ひっくり返す工程は、革を水に濡らして柔らかくよく伸びる状態にして行います。革にシワが残ったり、変形してしまうことはありません。通常のマッケイ製法の靴と同じ厚みのソールを使っているにも関わらず、アッパーの革が折り返していることにより見た目のソールの厚みはほんのわずかです。  

 Alminiメソッドは偶然にもあるブランドがバレエシューズに用いていた製法に酷似しています。バレエシューズはまさにAlminiが目指した究極のエレガントと履き心地の良さが求められるため、縫い目が外から見えず足にもあたらないこの製法が用いられたのでしょう。Alminiのドレスシューズはバレエシューズに比べると履き口が狭く、作る過程でひっくり返すことはより困難であるはずです。この製法をドレスシューズに採用したメーカーがないことがその事実を物語っています。

 究極のエレガントへのこだわりはアッパーに施されるスキンステッチにも表れます。革の内部を手で縫い通すスキンステッチは、通常、アッパーを立体に成形する前の段階で施されます。しかしAlminiは、スキンステッチを行ってから立体の靴に成形するまでの過程でステッチの位置がわずかにでもずれるのを嫌い、靴を形作ってからスキンステッチを行います。もちろんこの方法は、より高い技術が求められ、手間も時間もかかります。

 究極のエレガントさと履き心地の良さを実現するため、もちろん素材にもこだわっています。使用される世界最高の超高級カーフ。高価すぎて日本に入ってくることはないほどです。Alminiのドレスシューズにはこのカーフ、スエードの靴では同じ革を使ったカーフスエードが使われています。

  WFGとAlminiのつながりはWFGが信頼するある方の紹介からでした。そしてAlminiの「家族のように感じられる人としか商売をしたくない。」「たがいの結婚式に出席し合うような人とのみ商売をしたい。」という姿勢にWFGが共感し、両者の関係が始まりました。この関係はお客様の方向を向いて商売をするWFGにとって望ましいものです。 

World Footwear Gallery Official BLOG

1979年の創業以来、世界中の本格靴を中心に皮革製品のご紹介を通し靴文化を始めとする細やかなライフスタイルのご提案に努めています。ここでは靴の魅力や役に立つ情報を配信予定。イベントや商品についての最新情報は公式HPをご覧ください。

0コメント

  • 1000 / 1000