アメトラ

　最近、「日髙さん、アメトラですね？」と複数の人に言われます。メンズファッションに詳しい方なら分かると思いますが、アメトラとは、アメリカン トラディッショナルの略語です。

　不思議ですね。写真に写っている黒のダブルブレザーはLARDINI（伊）、パンツはインコテックス（伊）、オックスフォードのボタンダウンシャツはFRAY（伊）、ネクタイはKENT & CURWEN（英）とアメリカのものは何一つ身に付けてないのにアメトラ？確かにブレザー、ボタンダウンシャツとレジメンタルタイの組み合わせがアメトラを象徴しているのです。もちろんブレザーは通常のボタンの形を模したメタルボタンで、ボタンダウンシャツの生地も繊細、アメリカ式に右下がりのストライプではなくイギリス伝統の右上がり縞のレジメンタルタイと、無意識にミックスしているんですね。

　私がいつも写真などを見て憧れるコーディネートは1930年代から40年代のフレッドアステアのものです。アメトラと言えばアメトラですね。ただ、日本がアイビーファッションとして取り入れ始めた1950年代以降のアメリカントラッドよりも古いスタイルなのです。ボタンダウンのシャツとレジメンタルタイの組み合わせはスポーティーでエレガントそのもの。ツイードのジャケットやブレザーもよく着ていたようです。

　靴はやはりエレガントなシルエットのものを合わせます。コインローファーほどカジュアルになり過ぎない、バックルとストラップで甲を調整できるスリップオンシューズが好みです。

　やはり私はアメトラが好きなのでしょうね。かつて、強力なドルの力で世界中を席巻したアメリカ人たちの自由で伝統に捉われない気風が、リスペクトするブリティッシュスタイルに吹き込まれたアメリカントラッド。いつの時代にも色褪せない魅力を発揮して輝いている、まさにメンズファッションの金字塔です。