Brogue(ブローグ)とは? ご存知の通り、穴飾りのついた靴、またはその装飾のことです。
様々な本で靴の穴飾りについて触れられた文章を見てきましたが、水はけの良さを重視した狩猟靴から由来、などと言う訳の分からない説明ばかりでした。穴飾りを施したら水はけはかえって悪くなるではないか、と。
正しくは、どうやら、アイルランドやスコットランドで「靴」を意味する言葉に由来し、古くはアイルランドの湿地を歩くのに使われていた靴、アッパー全面に(靴の中に入った水を排出する)穴が開けられた靴が起源ということらしいのです。
それなら合点が行きます。ただ、この穴と、現在の穴飾りとの間に何らかの相関性があるのかはわかりません。1930年代の雑誌に載っていた記述で、暑い日にはブローグシューズを履きましょうという文章を読んだことがあるので、関係はあるのかもしれません。この頃、実際に穴の開いたブローグシューズもあったようです。
まあこんな出自があるブローグシューズで残念なのは、日本では近年、フルブローグ(ウィングチップ)をカントリー用、すなわちカジュアルな靴と捉える方が多いことです。
フルブローグ、それも内羽根式(オックスフォード)のものは、アメリカでもイタリアでもイギリスでも、ビジネスシューズとして最も良く履かれているスタイルなのではないかと思うのです。
2015年に『キングスマン』というロンドン、サヴィルロウを舞台にした英米合作映画がヒットし、英国紳士の装いがクローズアップされました。続編もリリースされているのでまだ記憶に新しいのではないでしょうか。
コリンファース演じるベテランスパイは英国仕立てのスーツに身を包み、3種類の靴を履いていました。クローゼットにはこの3種類の靴が数セット常備されており、それは壮観でした。その3種類の靴とは、ミッドナイトブルーのベルベットスリッパ―、黒の内羽根キャップトウ、黒の内羽根フルブローグ。
なんとイギリスらしいセレクトの3足(種)でしょう!スーツか、それ以上のフォーマルウェアしか着ない彼にとってはこの3足(種)だけで事足りるという訳です。いずれにしても、どれもロンドンという都会で履かれ、スーツの柄、生地によってキャップトウとフルブローグを履き分けているようです。
映画で印象的な合言葉(暗号)のようなものがあって、それは、
“Oxford, not brogue.”
でした。
字幕では「ブローグではなく、オックスフォード」となってたのですが、これではブローグがちょっと可哀想。正確に言うと、「オックスフォード(内羽根式の靴)、それもブローグ(穴飾りの入った靴)ではないもの」という意味なのではないのでしょうか?キングスマンはベルベットスリッパ―以外はオックスフォードしか履きませんしね。
なんて、靴好き以外にとってはどうでも宜しい話にお付き合いいただきありがとうございます。神宮前本店、日髙でした!
(写真:Oriental OTW6201A 税抜55,000円)
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